企業の投資と輸出に期待

企業の投資と輸出に期待

それでは、オバマ政権は均衡の回復の基軸をどこに見ているのだろうか。彼らは、経済成長の要因として、非構築物企業投資と純輸出に期待をかけている。企業投資が回復するには長い期間にわたる成長が必要とされる。米国経済において投資の果たす役割は将来大きくなるだろう。新しいインフラストラクチャーやクリーンエネルギー産業での投資、医療分野やR&D (研究開発)への投資、さらには、将来のイノベーションの発展による投資の持続的拡大によって米国は、長期では経常収支が均衡化していくだろうと期待する。つまり、国民貯蓄の増加が経常収支赤字の減少傾向につながり、輸出は経済回復とともに復帰するだろうという見通しだ。

 

しかし、これには言うまでもないことだが、米国製品を購入する外国の需要拡大に期待するほかはない。つまり、新興東アジアの急成長による内需拡大、それが米国からの輸出につながるというシナリオだ。米国経済の均衡回復と同時に世界軽済の均衡の回復が達成されなければならないというわけだ。米国は、輸出促進のために貿易促進調整委員会の立ち上げ、通商協定、ドーハ多国間貿易交渉など、これまで以上の自由貿易に基づく通商交渉に期待をかける。貯蓄とともに成長を実現し、輸出主導で富の蓄積がなされれば、国民の生活水準の向上が実現できるだろう。ただ、こうしたことはクリントン政権から言われてきたことであり、それが今日まで実現できていないというのも事実だ。成長すれば国家債務は大きな問題にならない

 

成長すれば国家債務は大きな問題にはならない

 

ところで、以上のような過程をたどるには、財政赤字問題の解決が不可欠だ。ブッシュ政権では、まともに取り上げられてはこなかったこの問題に真剣に取り組まなければならないという意気込みは相当なものだ。第5章「長期の財政課題への取り組み」がこのテーマを扱っている。『報告』は、現在の財政赤字は、ブッシュ政権の8年間に大きな原因があったと言う。まず、メディケアの処方施薬給付支出の決定によって連邦の医療費がかさんだ。従来は薬に関してはメディケアの対象外だった。これは当時から、ブッシュ政権が医薬品会社と結託して採用した政策だと、批判の声が上がっていた。そして、イラク・アフガンの2つの戦争が財政を悪化させた。ブッシュ政権では当たり前の戦争政策だったから、民生費を削っても国防費にはメスを入れようとはしなかった。こうした、負の遺産に加えて、3つの資格給付支出−メディケア、メディケイド、ソーシャルセキュリティ、つまり老人医療と低所得者の医療と年金-が連邦財政を圧迫するという。このなかで、医療費関係の支出は増加の一途をたどり、このまま放置すれば、長期の大きな赤字をもたらすだろう。

 

復興法関係の救済措置が連邦財政赤字に貢献したのは事実だが、それは短期のことであり、長期的には影響は何ら残らないというのがオバマ政権の考えだ。オバマ政権は、復興法による財政拡大は、民間消費、政府購入ばかりではなく、民間投資も増加させるという、財政拡大政策の積極的効用を説く。もちろんこれは、マクロ経済の状況によるのであって、経済がその能力一杯で動いているときに財政赤字で刺激を与えても、インフレ誘導から経済に混乱をもたらすか輸入が増加し対外債務が増えるだけであって、その刺激には意味がない。生産が投資と輸出の増加をひき起こし、経済の均衡化に資するということにはならないだろう。しかし、現在、米国経済は、その最大能力以下で動いているのだから、財政刺激策には意味があるのだと言う。潜在的GDPと実際のGDPという考え方をすれば、潜在的GDPは高いのだが、実際のGDPは、それに追いついていない。だから、財政刺激策で実際的GDP水準を高めてやる。まさにケインズ主義で、そういうことが必要なのだという言い方をしている。

 

それでは、長期で無理のない財政政策とは何なのだろう。財政赤字が積み重なれば、国家債務が増加するのは当たり前の話だが、国債投資者が無理なく購入する水準に抑えれば、債務は問題にはならないと言う。債務GDP比の安定が重要だと彼らは考える。債務GDP比は、次の簡単な式で導き出せる。「債務GDP比=赤字GDP比/名目GDP成長率」

 

たとえば、赤字GDP比が1%、名目GDP成長率5%だとすれば、債務GDP比は、20%に落ち着くというわけだ。『報告』は、これを財政アンカーという言い方で位置づける。財政赤字の状態でもGDP成長率が高ければ、国家債務は大きな問題とはならないとしている。だから、財政目標の達成のためには、性急な緊縮財政ではなく、時間をかけて確実に赤字削減を行えばいいということになる。つまり中長期の赤字削減政策が重要となるわけだ。『報告』が具体的に挙げているのが2つある。第1に、包括的ヘルスケア改革だ。第2に税制の均衡回復。これは富裕層に少々の負担を求めるものだ。少実に即した表現で、高額所得縛率を90年代に戻す、つまり、ブに戻すと言っている。

 

戦後の推移を図にしているが、60年代前半まで税率は80%から90%だった。レーガン元大統領が、俳優の時に映画への出演をセーブしたというのは無理もない。所得が高額となれば、いくら稼いでもその分ほとんど税金で持っていかてしまうからだ。その後は、ほぽ一貫して税率が落ちてきている。オバマ政権になって久々に「累進課税」という言葉が出てきたが、それは最高税率を90年代の40%台に戻す程度のことで、超富裕者優遇をやめる政策にすぎないのだと言っている。第3に挙げているのが、無駄な支出の削減だ。こうした政策を実行して、赤字を財政アンカーの範囲に収めることが必要と言っている。

 

 

 

 

年始から為替相場で再燃した欧州債務危機の一角にいるポルトガルの国債入札が、今晩7時半に予定されている。昨日は日本の野田財務相が欧州危機の救済に乗り出す考えを示し、また、欧州中央銀行(ECB)がポルトガル債を継続して購入したのではとの観測も入り、ユーロドルは堅調に推移している。日本が表明したのは、欧州金融安定基金(EFSF)が発行する債券の購入で、外貨準備を使用すると表明しているもののユーロには好材料と捉えられた。本日の入札ではユーロ圏内各国の意地もあるだろうし、何とかして順調に進みそうだ。明日には同じ債務国であるスペインやイタリアの国債入札を控えるが、一旦はユーロ買いの動きになりそうだ。その場合、今月6日に下落し始めたレベル、1.31ちょうど近辺が目先ターゲットとなる。

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